歴代の天皇が「偉い」のは、「神の直系子孫だから」という理由。 
 別に信じない人も受け入れない人もいるのは別に良いけど、理屈としては、そうだという事。   
 先代の天皇陛下、つまり現上皇陛下が偉いのは、「天皇も人間である」ということを在位中すべてをかけて体現なさり、 
 「天皇は神の子孫だから偉い」という理由をまったく意識させなくしたところにある。 
 昭和天皇がいわゆる人間宣言をなさり、現人神ではないとしつつも、その意識は戦後も根強く残っていた。 
 特に戦前戦後の人々は「天皇は神である」と強く教育され、それをよりどころに列強諸国と戦っていたわけであり、急に意識は変えられなかった。 
 昭和天皇も戦後は粛々と役目を果たされていたが、「天皇も人間である」と知らしめる具体的行動にまでは至らなかった。   
 昭和64年、つまり平成元年に昭和天皇が崩御し新天皇(現上皇)陛下となり、僭越ながら心中を慮れば、天皇陛下は「国民に寄り添う」という事を決心なされたのだろう。 
 これは、旧態依然とした天皇像を完全に壊してしまう事を意味する。 
 戦後の、文明国としての、新しい天皇像をたったおひとりで作り上げることに着手なされたのだと言える。 
 天皇を神と崇めていた人たちからは猛烈な批判と失望を受ける事を承知で、それでも新世代の「象徴天皇」としての基礎を作ろうと尽力なされた。   
 その期間は30年超に及び、前天皇(現上皇)陛下しか知らない人は、「天皇の何が偉いの?」とまったくピンと来なくなっている。 
 それこそが、前天皇(現上皇)陛下の成し遂げた偉業なのであると言える。この偉業を成したからこそ、前天皇(現上皇)陛下は「偉い」のだと理解出来る。   
 恐らく、もっと恐れずに言えば、前天皇(現上皇)陛下は「天皇」という存在の歴史的使命・存在価値が終わった事をご存知だったのだろう。 
 現憲法では「国民の総意」として天皇は存在するが、それもいずれ緩やかに自然に消滅する事を受け入れておられる。
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