手塚が最盛期を過ごした板橋区落合のトキワ荘はすでに取り壊されて
この世にないが、手塚本人を含むトキワ荘住人が好んで食べていた
ラーメン屋「松葉」は今でもかろうじて存続している。
「かろうじて」というのは、この前初めて行ってみたらガラガラだったからだ。
味は今でも「こういうのでいいんだよ」系のラーメンとしては申し分ないが、
いかんせんカリスマ系の濃い味ラーメンが群雄割拠の時代には霞んでしまう。
おまけに手塚一門のレジェンド漫画家がもはや遠い過去の存在になり過ぎて、
あえて今さら当時の名残りを惜しもうとするような人間も減ってしまったものだから。
トキワ荘もなく、街並みも当時からは相当に様変わりしているにもかかわらず、
数多のレジェンド漫画家の黄ばんだサインや即興絵が張り巡らされている
店内に入ると、やはり何か他とは違った雰囲気を感じるのである。
「ツワモノどもが夢の跡」とでもいうべき、熱狂の痕跡。
今でもその残り香を匂わせるだけの圧倒的カリスマが、確かに数十年前にはいたのである。
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