実際の剣豪はそんな、現代の凡人止まりなメンタルなどでは当然なかっただろう。
近ごろのスポーツ心理学で言われる「ZONE」なんかも軽く上回るような、
泰然自若の心構えで戦いに臨んでいたことだろう。
そうですらあれば、古流の剣術による殺し合いでは、実際に勝てたのである。
古流は、初見の相手でさえあるのなら必ず勝てる形(かた)を帯びた技の宝庫。
その内実を知られて対策を立てられれば勝つのもなかなか容易ではなくなるが、真剣勝負で
勝った以上は相手が死んで技の秘密も守られるから、選手が負けたからと言って死にもせず、
観客も大勢が見放題なスポーツの試合なんかよりもよっぽど勝ち抜き続けられる可能性は高い。
>>8に書いたような一対多の戦いも、バガボンドの吉岡戦みたいな辛勝ではなく、
連也斎の対野盗戦のような圧倒的快勝であればこそ、むしろ信憑性を帯びる。
そんな、場合によって勝ったり負けたり負傷したりするようなまぐれ当たり止まりの技で、
何十人と勝ち抜けたりするわけがないから、かすり傷一つ負わないほうがむしろあり得る。
生涯不敗の武蔵の戦歴にもまた、そういった「勝てる以上は勝てる」
という 理数系的、デジタル的な秘伝の裏付けが当然あったはずである。
そしてその秘伝の通りに技を繰り出して、確実に相手を殺してかかる心構えがあったのである。
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