RPAに関しては、近い将来商品化されるでしょう(もう既にあるかもしれません)。一方、ロボットの方は、直近では無理ですし、発売されても手が届かない値段になると、直感的に分かるのではありませんか?それがそのまま、「AI代替論」の盲点なのです。そう、AIは物理的行為を伴うと、途端に実用性が低くなるのです。
「ケーキ屋のお姉さんの仕事をAIに代替」は非現実的
現在、世の中には人手がかかる作業がたくさん存在します。それらの多くを「単純作業」と呼び、「誰でもできる」と軽く見なす風潮があります。その流れで何となく、単純作業はすぐにでも機械代替されそうだという話がそこかしこで聞かれます。ところが、雇用現場で念入りに取材すると、それが真逆だと分かるのです。
現在の先進国では人件費の高騰から、「なるべく作業は機械化」しています。にもかかわらず、今なお残っている単純作業というのは、「機械ができない」仕事の寄せ集めなのですね。AIならそのコツ・技も再現できそうですが、大きな壁が立ちはだかります。それが「多様な物理的作業」です。工場でも建設現場でも「その壁が超えられない」と、取材した企業は口をそろえます。
例えば、ケーキ屋さんのレジを担当している人のタスクを細かく見てみましょう。
① レジを打つ
② 商品をバックヤードから運ぶ
③ 商品を陳列する
④ 商品を取り出す
⑤ 商品を箱詰めする
⑥ 箱を包装する
⑦ 包装済の箱にひもをかけ、リボンをつけ、シールを張る
⑧ プレゼント用のメモを入れる
⑨ 値札をつける
⑩ ショウウインドウを磨く
⑪ フロアを掃除する
この他に店内飲食があればそれに伴うタスクが4~5個は発生します。これをたった1人の人間がこなしているわけです。
1つのメカでいくつかの作業が代替できたとしても、全工程なら4~5個のメカが必要になるでしょう。時給1000円前後でアルバイトが雇える中で、果たしてそこまでの投資を経営者がするでしょうか?
しかも。店に入ると愛想のよい従業員が対応してくれるのと、無機質なメカが並ぶのとでは、お客さんの気持ちも大きく変わるでしょう。こんなことから、たった1人分の「単純作業」でさえ、なかなか自動化はできないのです。
「自動化・省力はそんなに進みませんよ」とうそぶく取材先の担当者に、私は意地悪な質問をしたことがあります。
「でも、御社はグーグルと自動化の共同研究をしていると高らかにうたっているじゃないですか」。その問いへの返答は、「それはね、広報戦略や株主対応など別の狙いがあるのですよ……」。そう、こんなもんなんです。
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