まさにおれのオカンの実家がそうでありまして。
オカンの実家は僻地にある。集落から離れた山の中、険しい石段を登った先にオカンの集落にあたる。
何もない山間部、家が3軒しかないところだ。
石塀に囲まれた立派な日本家屋。オカンの両親が健在だったころは、当然2人が住んでいたが、
先に母が逝き、間をおいて今度は父が亡くなった。大往生だった。
長男夫婦は石段をおりた先の集落で暮らしているので、もはや実家は必要なくなったわけだ。
その長男こと叔父が、空き家となった実家を管理することに。
別に借家として貸し出すつもりではないが、思い出深い生家だ。
当面は暇を見て、掃除をしに訪れたり、締め切った雨戸を開放して、新鮮な空気を取り入れたりしていた。
父が亡くなってからというもの、その空き家となったはずの実家でたびたび異変が起き始めた。
実は空き家で仏壇を祀り、両親の遺影を立ている。
訪れるたびに線香を立てたり、湯飲みにお茶を汲んで供えてやってたそうだ。
午前中は叔父は室内の清掃を済ませ、いつものように仏壇にお茶を供えておいた。
午後からはそばのミカン畑にてミカンの収穫をする。
仕事もソツなく進み、3時になった。一服するべく、実家に戻ることにしたそうだ。
室内に入り、何気なしに仏壇の方を見て、ちょっと驚いた。
朝淹れたはずのお茶が、湯飲みの半分以上減っているのだ。
叔父は、「明らかに、誰かが口をつけたようだった。水蒸気で減ってしまったとは考えられない。だって半日足らずなんだよ」と、
おれに言って聞かせてくれた。その現象だけなら、いくらでも科学的な裏づけがとれなくもないが、
夜になって室内にいると、奥の部屋でズリズリッ、ズリズリッと布ズレの音が聞こえてくるではないか。
現在では叔父はすっかり怖くなり(いくら生家でも、布ズレを立てているモノの正体が両親だったとしても)、
以前のようにマメに掃除しに行かなくなった。
もちろん仏壇は叔父の家に引き取った。お茶が減る現象はもうなくなったようだが。
誰か住みたい人、いるかね? タダで貸してもいいよ?
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