新聞紙に包まれた筒状のモノ
かれこれ30年以上さかのぼらねばならない。
伯母は地元の市民病院で外科の婦長までのぼりつめた人で、大抵のことには動じないほど肝っ玉が据わっていた。
このエピソードは、まだ彼女が一看護婦時代の出来事。
あるとき、院長先生に呼び出され、「これ、すまないけど、外の焼却炉に捨ててきてくれない?
燃やしてくれたらありがたいんだけど」と、軽い口調で雑用を頼まれた。
手渡されたのは、新聞紙に包まれた細長い筒状のモノ。
伯母はそれを小脇に抱えて、玄関に向かって廊下を歩いていた。
不意に、何が包まれているのだろうか気になった。
というのも、筒状のモノを強くつかむと、わずかながら弾力があるからだ。
どうにも我慢ならなくなった伯母は、焼却炉の前まで来ると、こっそり包装を解いてみることに。
思わず尻餅をついた。
中から出てきたのは、人間のヒジから下の腕だったのだ。
男性のものと思われる骨太のソレには、びっしりと体毛が生えていた。
切断してから数時間が経過したのであろう。すっかり血の気を失い、青白くなっていた。
その病院はいろいろ悪いウワサが絶えなかった。ずいぶんアコギな医師もいたようだ。
今はすでに閉院して久しい。
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