幸福の木に花が咲く　それは不吉の暗示という

現在、42歳。独身。26歳のときに妻が花屋で安く買ってきて翌年に妻が出て行った直後に花が咲いた。
白くグロテスクな花が咲き、質の悪い香水のような芳香を部屋中に放ちつつ
床にトロリとした蜜を滴り落とし、そこにハエがたかって気持ち悪かった光景を思い出す。
この幸福の木（ドラセナ・マッサンゲアーナ）が花を咲かせたのはその15年も前のただ1度のこと。
いまだ再婚はできず、２度の転職で収入は一向に上がらず、住まいは2LDKから1Rに格落ちし、
晩酌のビールは1缶160円の500cc発泡酒1本だけという悲しい暮らしに落ち着いた。
心の支えは飼い始めて10年になる茶虎のメス猫1匹のみ。
これから咲く幸福の木の花、今度は俺から何を奪おうというのか。

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