脳神経学者ペンフィールド博士は、てんかんの治療のために、局部麻酔で患者が意識を保ったまま頭蓋骨を開き、
脳を直接刺激して、患者の反応を調べた。
この時、「シルビウス裂」を刺激すると、患者が様々な幻覚を見たり、自分の肉体から自分が離れる体験や、神を見たり、
死んだ肉親に出会ったりする体験を持つ事を確認した。
すべての臨死体験が「シルビウス裂」で説明できるかという問いに、小児科医モース博士は、次のように答える。
「体外離脱をしている時に周囲の様子を見ているのが、魂なのか、それとも脳の何らかの機能なのかは説明がつかない。
また、どうして脳は、死ぬ直前になって初めてこのような現象が起こるようにプログラムされているのか説明できない」
体外離脱体験は、側頭葉の「シルビウス裂」が起こす幻覚だとも考えられるし、魂と肉体とをつないだり切ったりする
スイッチのような場所だとも考えられるわけで、この論争に終止符を打つ決め手にはならないことになる。
この実験結果から、博士は次のような結論を導いた。
「死後を無の世界だとします。人は死んだ後、意識がなくなりすべてがなくなると仮定します。だとすると、死の瞬間、
人はそのまま死んでいくはずです。しかし、実験の結果はそれを否定するものでした。人は死の瞬間に、人間の意識、
あるいは、何らかの意識体と呼べる物体が、肉体から離れるというプロクラムが脳になされていることがわかりしました。
これは、死後の世界が無であるとすると、まったく意味のない脳の機能です。この世界には、意味のない生物学的な
プログラムというものはありません。つまり、この体外離脱の機能は、死後の世界が無なのではなく、何らかの世界が
継続することを意味していて…」
「シルビウス裂」を刺激して、臨死体験に近い幻覚を起こす実験をしたペンフィールド博士は、自分の死を迎える2年前に
「あらゆる精神現象をすべて脳内現象では説明できない」と言う結論に達していた。
彼の別荘の庭の片隅の石に、彼自身による落書きが残されている。
「(ギリシャ語で、精神活動を意味する)『ヌース』=『脳』」とした絵の「=」の記号に、死の2年前の彼は「×」印をつけた。
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