『家相風水の氾濫を憂う』 週間金曜日「論争」(1995.06.30)
家相と風水がブームらしい。
関連の書籍はかなりの数にのぼるし、テレビでもたびたぴ取り上げられている。
そのあおりをくって、建築設計の世界では家相に翻弄されることも少なくない。
しかも、それは住宅にとどまらずオフイスの設計までをも害している。
もちろん家相は迷信であるし、設計者は信じていない。
しかし、クライアント(依頼者)が気にしていれば,それに触れずに済ませることはできない。
住宅金触公庫が行なった居住性調査では「家を建てる時家相を考慮したか」の問いに対して、
名古屋の約70%を筆頭に全国で五七パーセントの建条主が「考慮した」と答えている。
東京でも約40%に達している。
生活の根幹をなす住宅までもが迷信に毒されているという恐ろしい状況である。
これは1988年の調査だから、最近のブームを考えるともっとひどくなっているかもしれない。
もっとも、建てる家族が気にしなくても、親や親戒に言われて考慮した建築主もいるだろうから、
人口比で平均57%が気にしているということではない。
信じている人口はおそらく 10%台だろう。
家粗を気にする人が、必ずしも信じているわけではない。
昔からそう言われているから、周りが言っから、というような薄弱な理由がほとんどだろう。
いわゆる無批判な受け入れである。
その点でメディアの影響は非常に大きい。
テレビなどで面自おかしく取り上げられる超能力、霊能力、超常現象などに対して大方の科学者は無視してきた。
同じように建築家や建築技術者たちも「家相」や「風水」を無視してきた。
迷信なぞに言及することさえおぞましいというのが専門家の態度だった。
しかし、その一方で露出度が大きい家相見によって吹聴されるうちに、本来チッポケな存在の
「迷信にすぎない家相」があたかも「正当な存在」であるかのように増幅され、定着されてしまった。
「魑魅魍魎の世界」を商業主義的な理由(視聴率)で垂れ流してきたメディアと、
それに異議を申し立てなかった建築専門家の責任は大きい。
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