亀田総合病院特命副院長
ジョン・C・ウォーカー
あなたは、医療資格者の免許が終生、有効である日本のシステムを疑問に思ったことはありませんか。
40年も前に医大を卒業して免許を得た医者が、そのまま一度たりとも資格を更新することなく、死ぬまで現役の医者でいられるというのです。
このシステムは、私たち欧米人にはなんとも理解しがたいものです。40年たてば、医学上の理論も学説も、治療方法も、治療器具も、薬も、大きく変わります。40年前に学んだ知識や経験だけで、最新の治療を行えるとは思いません。
アメリカでは、どの州でも医師免許は2、3年で期限が切れます。運転免許証と同じです。州によって多少の違いはありますが、免許を更新するためには一定期間の継続医学教育を受け、修了証を提出する必要があります。看護婦や理学療法士、薬剤師など、医師以外の医療資格者についても、同じような免許更新規定があります。
この規定により、医者や他の医療資格者は、定期的に少なくとも最低限の継続教育を受け、それぞれの専門分野における最新の理論や技術に触れることになっています。
あなたは、医療資格者の免許が終生、有効である日本のシステムを疑問に思ったことはありませんか。40年も前に医大を卒業して免許を得た医者が、そのまま一度たりとも資格を更新することなく、死ぬまで現役の医者でいられるというのです。
そもそもアメリカでは、病院が医者を採用する際に厳しい審査があります。病院のスタッフ・ドクターの職を得ようとすれば、かならず資格調査と資格認定のプロセスを経なければなりません。この点もまた、アメリカの病院と日本の病院とで大きく異なる部分です。
私の見るところ、医者たちは十分な経歴調査もなく、ほとんどあてずっぽうに採用されるようです。以前、勤めていた病院から報告書を取り寄せることはなく、推薦状を求めることもありません。そもそも、数年単位で病院を移って行く医者には、勤務評定の記録がなく、過去の業績を調べることも容易ではありません。
たいていの場合、医者は着任したその日から診療を始めることができます。能力や経験に応じて治療の内容を制限されることはないし、禁止される処置もありません。
もし、その医者の診療成績が芳しくなく、患者から多くの苦情を受け、アルコール依存症だったとしても、病院を移ってしまえばもうわからないのです。あるいは、患者から医療ミスで訴えられているとしても、そうした情報が次に勤める病院に知らされることはほとんどありません。調べようにも、記録がありません。
逆に、その医者がひじょうにすぐれた治療成績をもっていたとしても、新しく採用する病院には知りようがありません。給料も、経験や生産性とは無関係に決められています。
「日本の医局は伏魔殿」
なぜそのような無責任なシステムが許されているかと言えば、原因は日本独特の「医局制度」にあり・・・
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