ウチの妹がスプーン曲げをした件。
妹が中2ぐらいころの話。学校から帰ってきて、おれと一緒に3時のワイドショーを見てたんだわ。
1990年当時、よくやってた心霊関係の番組。生放送だった。
いかにもって感じの女霊能者(名前は失念。紫の衣装をまとった痩せぎすの中年女)が、
「これから私が、テレビを観ている人に向かって念を送ります。この力でスプーン曲げに挑戦してみてください。
きっと曲がるはずです。これで私の力を証明しましょう。と同時に、曲げられた人にも潜在能力があることが確認できます。
すぐお手元にスプーンを用意してください」
と、自信たっぷりに言ってのけたので、おれと妹はニヤニヤしながらスプーンを持ってきた。
やれるものならやってみろ、という心境だった。
女霊能者曰く、スプーンを縦に持って、親指を柄に押し当て、『曲がれ』と念じ続けよとのこと。
そこへ彼女がテレビの向こうから『補助』するパワーを送るそうな。
おれと妹はおのおのスプーンを持ち、かまえた。
「では行きます。……〇▲☆×◎◇●□…………えいッ! 今、飛ばしました!」と、テレビの向こうの霊媒師が言った。
次の瞬間、妹が悲鳴をあげた。「ひいいいいいッ! に、兄ちゃん、……曲がった! 曲がったよ!」
ゾッとした。鉄製のスプーンが、それこそ90度にひん曲がっていたのだ。
両手で力を入れて、無理矢理曲げようとしても、なかなか曲がらないはずなのに。
妹が言うには、スプーンが曲がる直前の感触はこんなだったそうだ。
「女霊能者が念とやらを送ってきたら、急にスプーンに押し当てていた親指が熱くなった。ジワ〜と来るものがあった。
まったく力を入れることなく、水飴みたいに曲げてしまった。グニャリとした感触が今でも残ってて気色悪い」
とんでもない力を発揮したのに、妹の二の腕には鳥肌が立っていた。
おれのスプーンはウンともスンとも言わなかった。
スプーンを曲げたところで、なんの社会の役にも立たんぞ、コラッ! 負け惜しみじゃないからな!
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