俺が、近年で己れの美学を貫いて生きた人物として
真っ先に思い浮かべるのが、この田中清玄という人だ。
戦前といわず、昭和末期ごろまでは日本も命知らずな荒くれ者には事欠かなかったようだが、
そのような剣呑さと武士道級の美学を高度な所で両立させていた人物となると、
近代ではこの人以上といえる者を知らない。
戦前に非合法の武装共産党党首、戦後には山口組とも昵懇な非利権右翼と、
最も命の保証がないような経歴を渡り歩き、実際に暗殺未遂で死線を彷徨ったこともある。
CIA協力者という噂もあるが、その割にはコスモ石油創業者や昭和天皇の腹心といった
経歴の豪華さに見合わない歴史上からの抹殺加減に、この人の後継者にあたるような人材を
徹底的に根絶してかかったような事実があるものだから、どちらかといえば敵対していたのだろう。
(敵対関係の中での取引を協力と誤認されたのかもしれない)
「美学を持って生きる」ということは、たとえ蛇やミミズとして地を這ってでも生き延びて
一矢報いることを信念としている俺にとっても、ちょっととっつきづらいところがある。
もちろん、この人並みやそれ以上の精神力を養うことにはやぶさかではないが、
そこにさらに美学という筋目を伴わせるということでは、否定派でなければ、
この人と出身の近い羽生結弦とかのほうが近しいかなと思うわけだが。
返信する