死に関わるバイアスは 次の様に作用します。
人は、いつか死ぬという事実に直面すると、それを否定する話を何でも信じてしまい、
本当は永遠に生きられると思い込みます。
これはバイアスの中でも最大のものでしょう。400件以上の研究で実証されていますから。
研究方法は巧妙かつシンプルです。説明しましょう。
まず、あらゆる面で似通った人々を2グループに分けます。
片方には、皆いつか死ぬことを伝え、他方には何も伝えず行動を比較します。
こうすれば、死を意識することで行動にどんな影響があるかを観察できます。
何度やっても結果は同じです。
自分の死を意識したグループは、死から逃れて永遠に生きられる話を信じる傾向が強くなります。
最近の研究を例にあげると、不可知論者、すなわち特定の宗教的信条を持たない人を2グループに分け、
一方には自分が死んだ時のこと、他方には、孤独な時のことについて考えてもらいます。
その後、再び宗教的信条をたずねます。
死後のことを考えたグループは、神とキリストへの信仰を表明した人が2倍にのぼりました。2倍です。
実験前は全員が不可知論者でした。
でも、死の恐怖を与えるとキリストにすがるようになったのです。
死を考えると証拠の有無とは関係なく、信条にバイアスがかかることがわかりました。
これは宗教だけでなく、不死を約束する信念体系なら、どんなものにも作用します。
後世に名を残すことや、子どもをもつこと、 大きな集団の一部として生き続けることを約束する国家主義にまで作用します。
これは人類の歴史の過程で形作られてきたバイアスです。
これらの実験におけるバイアスの基礎となる理論は「存在脅威管理理論」と呼ばれます。
発想は単純です。私達が培ってきた世界観、すなわち、この世界や自分の居場所について私達が語る物語とは、
死の恐怖をコントロールするために存在します。
不死の物語は、何千もの表現方法がありますが、一見多様に見えても実際にはたった4つの基本形式しかないと考えています。
そして、歴史の中で基本形式は繰り返され、時代ごとの言葉を反映して、わずかな違いが生じているだけだと考えます。
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